トップ > 「フルマラソンにむけた効率的なトレーニング」
たとえトップ選手であっても、1回のトレーニングでは30km以上は走らない。そんなコンセプトに象徴されるように、距離ではなくバランスと効率を重視したトレーニングを行うことで、確実に結果を出し続けるセカンドウィンドAC。このランニングクラブでコーチを務め、トップ選手から市民ランナーまで、幅広いサポートを行う大角重人さんに、フルマラソン前に効率的な練習を行うためのポイントを教えていただきました。
「多くのランナーは、本番で結果を出せるかどうかという不安も手伝って、練習で長い距離を走ることにこだわりがちだと思います。しかし、セカンドウィンドが重視するのは、いかに効率良く練習を行うかということ。
練習量が増えれば、それだけ身体に疲労がたまって、思わぬケガや故障につながります。故障のストレスを抱えるよりは、練習を腹八分目にとどめ、よく寝て、よく食べるほうが、よほどレース本番での満足度を高められるはずです。とくに、市民ランナーは、あまり時間がないですから、少しでも質の高い練習をしたいもの。フォームが崩れたままでゆっくり長く走ってしまうよりは、本番に直結する良いフォームで、レースペースを意識した短めの練習をおすすめしたいと思います」
セカンドウィンドには、ホノルルマラソン、北海道マラソンなどで優勝経験もある嶋原清子選手や、2010年の名古屋国際女子マラソンで優勝した加納由理選手など、数々のトップ選手がいます。そのトップランナーでも1回の練習で走る距離は長くても30km。他のクラブチームと比較しても長くありません。
「3ヵ月後のフルマラソンにむけて練習を始める場合、①長い距離のジョグに身体をならしてから、②スピード練習に切り替える、というランナーが多いようです。しかし、長距離のジョグで疲労をためてしまうと、そのあとのスピード練習が十分にできないまま本番を迎えることになってしまいます。
だからこそ、はじめからスピードも重視した練習をすることが大事なのです。その中でしっかりとスタミナをつけることも可能です。ポイントは、レース本番よりも少し速いペース、そして途中でペースダウンしないで走りきる速さを保つこと。距離を抑えるかわりに、レース本番よりも負荷のかかるペースで走ったり、平地よりも負荷の高い、坂の多いコースやクロスカントリーなどを走るのが良いでしょう。トップ選手の場合は、こういった練習に加えて週に1~2回、30分~1時間のウェイトトレーニングを行うことで、体幹を強化しケガや故障のリスクを減らすようにしています。
3か月間、調子を崩さずによい練習を続けられる人は少ないものです。練習日の自分のコンディションを把握し、オーバーワークを避けるのも、練習の重要なポイントだと考えましょう」
ここで、練習量にこだわりすぎてしまう人が、どうやって自分を抑えたらよいかを大角さんに教えていただきました。
「自分の平常時の状態を把握しておき、その日の調子がわかるようにしておくことです。たとえば、毎朝起きる前に布団のなかで体温や心拍数を測ります。いつもと比べて数値が高ければ、疲労が残っているということです。体温のブレ幅は体質や性別によって異なりますが、3ヵ月くらい続けていくうちに、その人なりの誤差の範囲がわかってきます。心拍数も同様で普段よりも多い数値の場合は疲労がたまってきていると考えてよいでしょう。
このほか、自分なりに“疲労の5段階評価”を作って、今日はこれくらい・・・と記録をつけると、コンディションが把握しやすくなります。これは、練習日誌とあわせて行うことをおすすめします。
第三者のアドバイスを受けるのも有効です。ランニングコーチの指導を受けていれば、“今日はりきんでしまっていたね”とアドバイスを受けられるでしょう。また、治療院やスポーツマッサージなどに定期的に通い、筋肉の張りぐあい、疲労度をチェックしてもらうのもよい方法です。その場合、重要なのは、同じ先生と長く付き合うこと。長く診てもらうことで、先生もあなたのコンディションをより深く理解し対応してくれるはずです」
マラソンデビューの前は誰でも少しは不安になるものです。レースへの不安が大きい人は、本番の1か月半くらい前に、一度ハーフマラソンに出場してみてはいかがでしょうか?レース特有の雰囲気や条件に慣れるほか、さまざまなメリットがあります。そのポイントなどを大角さんに聞きました。
「ビギナーは、自分のペースを把握するためにも、ランニングウォッチをつけて走るようにしましょう。よくある失敗は、前半に飛ばしすぎて後半に失速するパターン。タイムとスピードを確認しながら、どのくらいの速さで走ると、自分にどの程度の負荷がかかるのかを実体験してください。ハーフマラソンで後半のペースが落ちてしまったら、フルマラソンではもっとスピードは落ちるでしょう。フルマラソンのタイムは、一般的にハーフマラソンのタイム×約2.2倍といわれます。
さて、ハーフマラソンを経験し、晴れてフル初挑戦の際には、自分が1kmあたり何分のペースになるのかを知り、前半は飛ばさず落ち着いて走ることに集中してください。
また、走っていて途中で足がつりやすいという人は、筋肉疲労や水分不足など、さまざまな原因が考えられます。このような原因も含めて、それは自分の能力以上のペースで走ることで起こります。“レースや練習中に足がつってしまった”という人は、それ以上のペースにならないように抑えて走ることを心がけましょう。そうすれば、ゴールのほうから近づいてきてくれます」

大角重人さん:secondwind AC コーチ Shigeto OSUMI
1978年、滋賀県生まれ。早稲田大学競走部出身。現役時代は主務を務めながら全日本大学駅伝の7区、箱根駅伝の6区を走る。卒業後スターツ陸上部コーチを経てセカンドウィンドACのコーチに就任。2010年11月からは大阪に拠点を移し、関西地区での指導にあたる。
セカンドウィンドAC http://www.sw-ac.com/
▼大角重人さんによるドリルがチェックできる『ランニング生活』最新号
【Hot Info vol.11】 チャレンジ! フルマラソン
取材協力:コスミック出版
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