
コース概要
このコースでご紹介するのは、「ランニング理論」。ランニングをさまざまな角度から学術的に検証します。ランニングを理論的に考えることで、各ランナーが目指すべき目標、理想のフォームがさらにはっきりと見えてくるはず。また、それは結果的にケガや故障の予防にもつながります。しっかり学んで、日々のトレーニングにお役立てください!
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帳尻合わせの努力は逆効果

フルマラソン本番までの1週間をどう過ごせばよいのでしょうか?たとえば、あまり練習ができなかった人は、「せめて残された時間はみっちり練習しておこう」と考えるかもしれません。また、練習をしっかり積んでも、「食生活をさらに充実させて筋力やスタミナのアップを!」とはりきる人も多いでしょう。でも、残念ながらこうした努力は、レースの内容や結果に好影響を及ぼすことはほとんどありません。むしろ、練習のしすぎによる疲労の蓄積やケガ、食べ慣れないものによる体調不良などを招くことのほうが心配です。レースに向けたトレーニングやコンディショニングは、あくまでも3ヵ月、半年をかけて計画的に行うもの。勉強や仕事と同じで、最後の1週間で慣れないことをして帳尻合わせをしようとしても、そうそううまくいくものではないのです。
大会直前の期間は、走力や体力をアップさせる「準備期」や「強化期」ではなく、現在のレベルをキープすることで、本番でのトラブル発生を防いだり、普段どおりの実力を発揮するための「調整期」であると、まずは認識してください。
コンディションを「キープ」することがメインテーマ
フルマラソンに向けた調整期に入るのは、大会当日のおよそ10日前が目安。この期間では「練習でカラダに適度な刺激を与えること」、「消化がよくてエネルギーとなる食べ物を摂ること」の2点が大きなテーマとなります。
まず、練習量については、準備期や強化期に蓄積した疲労をしっかり取ることが重要なので、距離や強度を落とすことが鉄則。日々のジョギング習慣に5~10km程度のレースペース走をプラスするなど、筋肉痛や疲労感を翌日以降に持ちこさないように調整します。一方、練習不足のランナーの場合は、タイムに対するこだわりを捨て、楽しく安全に走り抜くために、フォームのバランスを整えたりペース感覚をつかんだりすることをテーマに走ることがおすすめ。短めのジョギングやウォーキングを日課として、長めのスロージョグを2~3回実施する程度にとどめておきましょう。
食生活に関しては、ごはんやうどん、パスタなど、ランニングにおけるエネルギーに変わる炭水化物が多く含んだ食品を中心に、タンパク質や脂質、ビタミン、ミネラルも摂取できるように栄養バランスを整えます。
以上の2点を念頭にコンディションを高めるのではなく、キープすることを心がければ、そうそう間違ったことにはならないと思います。ただ、この調整期にもう一つ配慮してほしいことがあります。それは、睡眠時間の確保。大会前夜は気持ちが高ぶって眠りが浅くなり、睡眠不足に陥ることが珍しくなく、それがレースに臨む際の心理的な負担になることが多いもの。ただし、これはある程度防ぎようがありません。調整期に入るとトレーニング時間が短くなりますから、その分を十分に睡眠に充てるようにして、トータルで睡眠時間を確保するように心がけてください。
会場でのウォーミングアップ、どうする?
本番当日における会場の慌ただしい雰囲気の中でどのようにウォーミングアップを行うべきか。多くのランナーの方にとって気になるところではないでしょうか? 私の現役時代にはスタートの2時間前には会場入りするようにして、体操やストレッチ、ペース走など、じっくりとウォームアップを行い、スタートエリアに向かうのはレースの直前でした。ただし、こうした余裕のあるアップが可能なのは大会の招待選手など一部のアスリートのみ。市民ランナーの場合、大きな大会では30分以上も前からスタートエリアで待機しなければなりませんし、着替えや荷物預け、トイレ待ちなどもあるので、練習時のようにウォーミングアップを行うことは難しいものです。
でも、私個人の考えですが、フルマラソンのような長距離レースのウォーミングアップでは、筋温を下げないようにすることさえ心がければ、あまりその内容にこだわる必要はないのではないでしょうか。なぜなら、サブスリー(フルマラソン3時間切り)以上を目指すようなレベルのランナーは別として、レースで4時間、場合によっては6時間、7時間と走り続けなければならないにも係わらず、レース前のウォーミングアップで筋肉に強い刺激を加えるのは、かえって限りあるスタミナや筋力をロスしかねないからです。私が主宰するランニングクラブでも、レース当日、メンバーには10~15分のジョギング、それも隣の人と普通に会話ができる程度のスピードで走るウォームアップを勧めていますが、これも、その後に行うストレッチ(スタートの30分前までに終える)やレース本番に向けて筋温を上げるためであって、筋肉に強い刺激を与えるためではありません。
特にフルマラソン未経験のランナーは、15分以上のジョグやレースペース走をする必要はないと思います。その代わり、スタートから2~3km地点までを、あえてスローペースで走るウォーミングアップの区間にあてることをお勧めします。レース直後の混雑の中では無理をせず、カラダが温めるまで淡々と走り、フルマラソンを40kmのレースと捉えても良いかもしれません。
レース前の水分補給は慎重に
喉の渇きや脱水症状を防ぐため、レース前に十分な水分を摂取しておくことは重要です。しかし、スタート1時間前を過ぎてからもゴクゴクとたくさん飲み続けるのはNG。まとまった量を摂るのは1時間前までにして、その後は少量の水分で口の中や喉を軽く潤す程度にします。水分は摂りだめすることはできず、摂りすぎれば排出のタイミングが早くなり、レース中に仮設トイレの列に並んでタイムをロスしたり、無理に我慢してペース感覚の狂いや体調不良を招いたりしてしまいます。スタート後もエイドステーションで給水は行えるので、スタート前の過剰な摂取はしないようにしましょう。
完走や自己ベスト更新などフルマラソンにかける市民ランナーの皆さんの目標はさまざまですが、すべての方に共通して、まずは「楽しく安全に走ること」を第一の目標としてほしいと思います。そのためにも、大会当日に向けたコンディショニングはとても大切です。練習、栄養補給、休養と、できることから、なるべく早めに取り組むようにしましょう。
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